「カリスマ医師の隠された真実」を見た
BS世界のドキュメンタリー「カリスマ医師の隠された真実」シリーズを見た。
これはひどい。余命数年でもないのに先端医療(治験などの開発中の医療)を受けようとしている人に見せたい内容だった。
あらゆる人や組織は様々な理由でリスクを正しく説明しないことがあるということを忘れないようにしたい。
原発然り食品添加物然り、権威主義や安全神話は恐ろしい。(日本食品添加物協会のPDFを見てもどこにも発癌性物質と判明して規制されたものがあるなどとはかかれていない http://www.jafaa.or.jp/tenkabutsu01/)
もちろん、疑心暗鬼になるのもよくないが。(Appleのスティーブ・ジョブズは民間療法だけで癌を治そうとした結果、治せた癌が治せないほど進行し亡くなった)
人間不信気味の人や思い込みが強すぎる人に見せて良いかは悩ましい。
シリーズの要約
記憶違いがあるかもしれないが、大体こんな感じだった。
- カロリンスカ研究所がスター医師マキャリーニを招き、世界初の人工気管を使った再生医療手術を複数の人に行う
- マキャリーニは人工気管に問題があることを知っていたのに執刀を強行する
- 案の定患者は次々と亡くなっていくが、手術後の良好な状態のみがアピールされ被害者が増えていく
- 健康な人にまで移植手術を行い、やはり亡くなる
- 他の医師が警告を出すもののカロリンスカに無視され、警告を出した医師たちの立場は悪くなっていく
- 第三者機関が調査し問題があるといったにも拘らず、カロリンスカはこれも無視する
- 動物実験をしていなかった疑惑まで出てくる
- 問題が報道され総辞職
印象深かったシーン
見所といっていいのか分からないが、印象深いシーンが色々あった。
特に、交通事故の後遺症で気管に穴が開いていて、激しい運動が出来なかったり手で塞がないと声を出せない女性が、
手術前に医療関係者と話をしているときの嬉しくて光栄そうな顔と、手術後容態が悪化し人工気管が潰れていると聞いたときの苦痛と後悔と絶望に溢れた泣き顔は忘れ難い。
彼女は人工気管移植手術さえしていなければ、不便はあっても長く健康に生きられた可能性が高かったようだが、幼い子供と遊びたい、もっと健康な状態に戻りたいと願うあまり縋ってしまったようだ。
リスクを正しく説明せず危険な手術を強行したマキャリーニ側が99%以上悪いが、彼女やその家族に一切の落ち度がなかったのかというとそれもないと思う。
いくら知識・情報格差があるから、いくら相手が高名な医師だからといって、医療関係者を過信して状態が良いのにリスクがある先端医療に手を出したのは良くなかったのではないか。
対岸の火事ではない
しかし、この事件はマキャリーニやカロリンスカだけの問題だろうか。
韓国ではファン・ウソクによるES細胞捏造、日本では小保方晴子によるSTAP細胞捏造が問題になった。
何が問題だったのかを考えると、似たような問題点があるように思う。
契約などの都合上、功を急がざるを得なかったところがあったのではないか。マキャリーニは明らかに焦っていた。急ぐうちに感覚が麻痺したのではないか。
医療従事者の大義名分で言い訳しているうちに感覚が麻痺したというのもあるだろう。
患者や報道関係者に医療関係者までもが、最先端医療、歴史を作る、世界的名医などといった高揚感に酔い、冷静に客観的に物事を見れなくなっていたようにも思う。
医師や第三者機関の警告が無視され次々と追い出されていったりする様は悪夢のようだった。報道機関が権威主義や圧力に屈して忖度するような事態になっていたら、今も被害は拡大していただろう。
- 契約などで【追い詰めてはいけない】
- 高揚感などに【酔ってはいけない】
- 【冷静に客観的に】物事と真摯に向き合わなければならない
恐らく、似たような問題はありとあらゆる分野でこれからも起こり続けるのだろう。
だからこそ、目を背けず向き合わなければならないのだと思う。
コメントを残す